群発頭痛については、頭痛講座(総論編)の「群発頭痛」の解説もご参照ください。

群発頭痛の診断基準:群発頭痛はどのようにして診断するのでしょうか

•群発頭痛の診断は、片頭痛や緊張型頭痛と同じく国際頭痛分類の診断基準に従ってなされています。

 

•診断基準項目は5つあり、その内容は以下の通りです 

①として、②③④に合う発作が5回以上ある

②として、左右どちらかの目の周囲や側頭部に15分から180分続く激痛が生じる

③として、次のいずれかあるいは両方を頭痛の時に認める

(1)頭痛が起こる同じ側に、目の充血、流涙、鼻づまり、鼻水、眼瞼のむくみ、額と顔の発汗、額と顔の紅潮、耳閉感、瞳孔の縮小、眼瞼の下垂の1つ以上を認める

(2)じっとしていられない、もしくは激しく動きたくなる感じ

④群発期(発作が起こる期間)の半分以上で発作が1日あたり0.58 回起こる

⑤他のどの診断基準 より合致する

 

•①から④のうち1項目だけ合致しないが他の頭痛には合致しない場合に、「群発頭痛の疑い」と診断します

 

•通常は、群発頭痛の患者さんは受診するときは発作が治まっており、問診より①から④の特徴を確認します。③の(1)の特徴については気が付いていないことがあり、ない場合は発作時に鏡を見たり家族に診てもらったりして確認してもらっています。また群発頭痛のような激しい一側の痛みはくも膜下出血、動脈解離、脳腫瘍などでも起こることがあり必要に応じてMRIなどの検査で他の原因を除外します。

 

•群発期は半年から2年に1回程度起こり、ひとたび起こると1-2か月持続します。

また群発期が1年以上続くことがあり、この場合慢性群発頭痛と診断します。

 

•診断基準に無い特徴として、 飲酒で発作が誘発される、夜間痛みで目が覚める、ことがあります。

•日本人と欧米人の違いとして、慢性群発頭痛は欧米では群発頭痛の1~2割に認めますが日本人は数%しかいないこと、欧米人には殆どいませんが日本人では約2割が発作中にじっとしていられない感じがあっても実際には動かずにじっと我慢していること、があります

  • 静岡赤十字病院神経内科 今井 昇


 

群発頭痛はどのように治療するのでしょうか

  • 女性の性周期に合わせて毎月起こる片頭痛とは異なり、群発頭痛は一年のうち、限られた数週間から数か月の間に連日連夜の如く集中的に起こり、またその期間中、脳は異常な興奮状態を繰り返します。
  • 従って患者さんが自分の群発期間をよく把握しておくことにより、起こりそうな予兆として、寝つきの悪さ、夜間の突然の覚醒、もしくは顔面の額のあたりの赤らみなどの症状が現れ始めたら、すぐに専門の医師を受診し、頭痛発作の予防薬を処方してもらい服用することが大切です。
  • 群発頭痛を予防する薬剤としては、神経細胞膜の安定化作用のあるベラパミル塩酸塩(ワソラン錠)や、大脳皮質の過敏性を抑える効果のあるバルプロ酸ナトリウム(デパケン錠、セレニカ錠)などを患者さんの症状に合わせて適宜処方します。
  • また頭痛発作が激烈な初期の2週間ぐらいに限り、神経や脳血管の腫れをとる作用を持つ副腎皮質ホルモンを併用することもあります。
  • このような予防薬の毎日の服用と共に、発作期間中は睡眠時間を十分に確保する、アルコール摂取や喫煙を控えるなどの生活習慣の改善により、連日の頭痛発作はその頻度や程度が徐々に軽減してゆきます。
  • それでも耐え難い頭痛発作が起こった際には、医療機関で純酸素をゆっくりと15分くらい吸入すると改善することもありますが、スポーツ用品として販売されている酸素スプレー缶では数分でなくなるため効果は得られません。
  • 頭痛発作時の頓挫薬としてスマトリプタンの在宅自己注射を行うことも可能になりましたが、スマトリプタンの点鼻剤(保険適応外)でも効果が得られることが多く、自己注射は患者指導が十分に行き届いた時点で処方いたします。
  • またスマトリプタン以外のトリプタン製剤の錠剤や口腔内崩壊錠(速容錠)でも効果が得られることもありますので、担当の医師と相談のうえ、最も有効な発作回避法やトリプタン製剤を選んで発作に対処してゆくことが大切です。
  • 東京女子医科大学 脳神経外科 頭痛外来 客員教授 清水俊彦

群発頭痛はなぜ起こるのでしょうか

  • 群発頭痛の発生機序については、ホルモン説、体内時計の狂い、遺伝子説やなど、諸説ありますが、いまだ正確には解明されていません。
  • 群発頭痛が女性よりも男性に圧倒的に多いことから、男性ホルモンの過多が関係しているとも考えられますが、女性でも起こることからすべての群発頭痛の患者さんに当てはまるとは言えないでしょう。
  • 脳の視床下部に存在する体内時計の狂いにより起こるとの説も、群発頭痛が睡眠中の毎日決まった時刻に起こりやすいことから関連があるのではないかと考えられます。欧米の研究で睡眠に関連した遺伝子の異常も報告されています。
  • 群発頭痛は春先や秋口あるいは年末になど季節の変わり目に多いことから、水痘ウイルスと群発頭痛との関連を指摘する説があります。小児期の水痘感染後、顔面や頭部に分布する三叉神経の神経節にウイルスが潜在し、季節の変わり目などに活性化すると帯状疱疹を発症します。
  • 群発頭痛の激烈な痛みは、眼の奥にある脳に血液を送る内頚動脈と呼ばれる大切な血管を保護するクッションのような役目をしている海綿静脈洞と呼ばれる細かい静脈のネットワークが異常に腫れることにより起こるとされていますが、前述のようないろいろな素因によりこの異常な腫れが引き起こされるのではないかと考えられます。
  • 片頭痛の患者さんが発作の時動くと痛みが強くなるため、じっとしているのとは逆に、群発頭痛の患者さんが発作時にのた打ち回って暴れることが多いのは、頭部を激しく動かすことでこの静脈洞にたまった血液が分散して腫れが引き痛みが和らぐためではないかとも考えられています。

 

  • 東京女子医科大学 脳神経外科 頭痛外来 客員教授 清水俊彦

群発頭痛はやはり女性に多いのですか、まわりに群発頭痛のひとはめったにいませんが、片頭痛とくらべると少ない頭痛なのでしょうか。

  • 群発頭痛の発症年齢は通常20-40歳代である.男性における有病率は女性の3-7倍である (慢性頭痛の診療ガイドライン2013より抜粋).

これまでの検討では,男女比に関しては5:1から6.7:1で男性に多いと報告されていました.しかし,Manzoniらは群発頭痛の発症の時期を10年ごとに比較して,徐々に男性の優位性が低下してきている事を報告しております(1960年以前の発症例では男女比6.2:1であるが,1990-1995 年の発症例では3.5:1と減少してきている).このことは生活習慣の変化,特に女性の喫煙率の上昇との関連が示されております. 

また,発症年齢は20-40歳での発症が多く,本邦の報告でも,平均発症年齢は男性で29-40歳,女性が24-40歳と同様でした.

 

  • 群発頭痛の有病率は10万人あたり56-401人程度と報告されており, 片頭痛に比べその患者数は少ない(慢性頭痛の診療ガイドライン2013より抜粋).

有病率調査は報告により様々でありますが, 10万人あたり56人から401人と片頭痛に比べその患者数は極めて少ないです(過去1年間の片頭痛有病率は本邦では,男性3.6%, 女性12.9%, 全体で8.4%.世界全体では男性6%, 女性14%, 全体で11%であった).しかし,群発頭痛の発症年齢が生産年齢人口であること,そして激しい頭痛が数週から数ヵ月と長い間群発する特徴から,群発頭痛の患者様は,頭痛発作期に日常生活および就業に大きな支障をきたしています.我々臨床家は,群発頭痛の患者数が少ないからといって決して軽んじてはならない頭痛であることはいうまでもありません.

 

埼玉医科大学 神経内科 伊藤康男

群発頭痛の仲間の頭痛 TACsの分類・病型

 

・群発頭痛は、国際頭痛学会による分類では、その他の類似した頭痛とともに三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalagias;頭文字をとってTACsと略される)の仲間に属しています。

 

・TACsの特徴は、

①短時間、片側性の頭痛発作です

②頭部副交感神経系の自律神経症状、すなわち、結膜充血、流涙、鼻閉、鼻漏、まぶたのむくみ(眼瞼浮腫)、前頭部や顔面の発汗、縮瞳、眼瞼下垂など、を伴う

ことです。

 

・TACsには、以下の頭痛が含まれています。

1 群発頭痛

2 発作性片側頭痛

3 結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)

 

SUNCTは、頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNA)の仲間と考えられています。

 

TACsには、痛みが一側性の眼窩部、眼窩上部または側頭部に起こるなど共通する要素も多いのですが、痛みの性状はそれぞれ異なります。相違点は次のようになります。

 

■TACsの相違点

痛みの持続時間

群発頭痛15~180分間

発作性片側頭痛2~30分間

SUNCT5~240秒

発作頻度

群発頭痛1回/2日~8回/日

発作性片側頭痛大半で5回/日以上

SUNCT3~200回/日

 

(鳥取大学脳神経内科・古和久典)