緊張型頭痛とはどんな頭痛でしょうか

緊張型頭痛とはどのような頭痛か

  • 緊張型頭痛は頭全体が鉢巻きで締め付けられるような痛みが続く頭痛です。
  • 主な原因は身体的・精神的ストレスによる筋肉の緊張と考えられます。
  • 例えば、上半身を前かがみにしたパソコン操作や、うつむき姿勢などを長時間続けると、頭を支えている首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、頭の筋肉も緊張し、血流が悪くなり、頭痛が起こってきます。
  • また精神的なストレスは自律神経に影響して、頭痛の誘因になります。

 

緊張型頭痛のおこるメカニズム

  • 筋肉の血流の減少や、筋肉が硬くなったり、筋肉に対する疼痛に対する痛みの感じ方の程度の成績から、筋膜や神経などにある痛みに対する受容体が関与する末梢性因子が存在すると考えられます。
  • 一方、脳幹や大脳などの中枢が関与するメカニズムとして筋膜から中枢への痛みに対する反応が三叉神経を介して中枢を感作するとする中枢性の因子もあります。
  • 緊張型頭痛のメカニズムは末梢、中枢いずれの関与も考えられ、おそらく頻度の少ない緊張型頭痛では末梢性因子が主に関与し、頻度の高いおよび慢性の緊張型頭痛では三叉神経を介した、末梢と中枢の両者が複雑に関与していると考えられます。

 

緊張型頭痛の対策

  • 生活習慣として普段から正しい姿勢をたもつことと、長時間同じ姿勢をとり続けないことを心がけることが大切です。
  • 運動や入浴は血行を促進します。
  • セルフケアで頭痛が改善されない場合は、薬物療法が行われます。
  • 筋肉の緊張を緩和する筋弛緩薬や鎮痛薬のほか、精神的ストレスが大きい場合には抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。
  • いずれも12週間毎に医師の診察を受け、症状がどのくらい軽くなったか、副作用がないかなどを確認しながら、薬の種類や量を調整していきます。

 

 東海大学八王子病院 病院長 北川泰久

 

緊張型頭痛の治療・対策について

  • 緊張型頭痛の病態には身体的・精神的ストレスが大きく関係していると考えられており、同一姿勢の保持などの身体的ストレスにより比較的急性に起こるものと、精神的要素や中枢性感作という状態が加わって慢性化してしまったものがあることは、これまで述べられている通りです。
  • いずれの状態に対しても、運動療法(体操)や入浴、リラクゼーションが治療の基本となります。
  • 運動療法の基本は全身の筋肉をバランスよく動かすことです。首や肩が張っているからといって、首や肩だけ動かしていても張りはとれません。ラジオ体操やテレビ体操のように左右の手足を対称的に使う動きが基本です。使う筋肉に偏りのある野球やテニスの後では筋肉痛が起こりやすいのに対して、水泳のように手足を対称的に使う運動では筋肉痛が起こりにくいことからもお分かり戴けるかと思います。
  • 入浴は体を温めることにより、首や肩の血流を改善するのが目的です。あまり熱すぎない温度でゆっくりと時間をかけて入浴しましょう。
  • 運動療法や入浴などによっても改善しない緊張型頭痛は薬物療法の対象となります。
  • 鎮痛薬は有効であり、長時間のデスクワークなどにより比較的急性に起こった緊張型頭痛で23日の内服で軽快するような場合にはよいと思いますが、既に慢性化してしまって連日になっている頭痛に対しては、のみ始めると毎日のむことになる可能性が高く、薬物乱用頭痛に発展してしまう危険があるためお勧めできません。
  • 慢性化してしまった緊張型頭痛に対しては、抗うつ薬や抗不安薬、筋弛緩薬が有効な場合があります。これらのくすりが医師から処方された場合には、まずは処方箋通りの用法できちんとのむようにし、定期的に診察を受けて症状の変化の有無を伝えることが重要です。
  •          (国立病院機構北海道医療センター神経内科 藤木直人)

 

「緊張型頭痛の危険因子、誘因」 その1

  • 緊張型頭痛の性状、メカニズム、治療や対策法についてはすでに述べられておりますが、一部重なる部分もご容赦いただき、ここではこの頭痛の誘発因子について説明させていただきます。
  • まず、私が外来で患者さんにお伝えするのは、片頭痛なのに肩こり頭痛だと誤解している方が極めて多く、その誤解を解くために、頭蓋骨内の脳表血管が広がる頭痛が片頭痛。頸部や頭蓋骨周囲の筋肉内の血管が縮むのが緊張型頭痛であるとお伝えします。
  • そのため、緊張型頭痛には、片頭痛と逆のリラックス、入浴や運動など血管を広げることが推奨されるわけです。

 

■筋肉の中の血管が縮むということはどういうことか?

  • 筋肉痛は誰でも経験していると思います。
  • 走りすぎた後に足がつってしまい、筋肉が固くなり痛みを伴うことがあります。それと同様のことをイメージしてください。
  • 肩から頸部さらに後頭部にかけての筋肉群と頭蓋骨周囲の筋肉が、同様に固くなるということです。
  • これは、筋肉が疲労してくるのは、筋肉内に乳酸などが貯留して末梢血管を収縮させます。
  • その結果、血流が悪くなり筋肉は魚の干物のように固くなります。
  • (医)斐水会 ながせき頭痛クリニック 永関慶重

「緊張型頭痛の危険因子、誘因」 その2

  • 頭は3-4kgの重さがあり、この頭を体幹とつないでいるのが頸部です。子供の持つボーリング球の6ポンド程度の重さです。
  • この頭の重さを支える姿勢は、下向き上向きであり、また、心理的などストレスがかかるとこの後頸部の筋肉は交感神経が支配しているため、無意識にいかり肩になります。
  • これら3つの姿勢が緊張型頭痛の危険因子であり、これらの姿勢をとることが誘因となります。
  • これらを下向き頭痛、上向き頭痛、いかり肩頭痛と3つに分類してそのの誘因となる姿勢を調査した結果は以下の通りです。

 

■下向き頭痛:手芸、編み物、読書、草刈り、調理、貴金属製造、内職、木工、IT関係のパソコン作業。

■上向き頭痛:剪定、摘果や受粉作業、電気工事、クロス張りなどの作業、丸背の高齢者。

■いかり肩頭痛:絶えず重いものを持ち上げる、子供を抱っこ・おんぶする、重いカバンやリュックを背負う、長時間の運転、寒冷ストレス  

 

  • これらはいつもそうなるかではなく、もともと慢性的に肩が凝っている状態に、上記のような負荷がかかり筋肉の緊張が加重されたとき、さらには筋肉を使っている時間が長時間にわたったときなどに緊張型頭痛になると考えられます。
  • このような筋肉の固くなる状態を避けることが肝要です。

(医)斐水会 ながせき頭痛クリニック 永関慶重

緊張型頭痛の診断や分類はどのようにするのでしょうか

  • 頭痛の診断では脳などに異常がある二次性頭痛の鑑別が必要となります.このため脳のCT写真やMR写真といった検査が行なわれます.
  • 頭痛は30分から7日間持続します.また頭痛の特徴は①両側にある,②締め付けられるような,または圧迫されるようなもの,③痛みは軽度から中等度,④歩行や階段の昇降のような日常動作で増悪しない,のうち2つ以上を満たします.そして,悪心や嘔吐は出現せず,光や音に対する過敏はどちらか1つは認めることはありますが,ない場合もあります.脳などに異常がなく,このような頭痛を呈する場合に緊張型頭痛と診断されます.
  • 緊張型頭痛は頭痛の日数によって,稀発反復性緊張型頭痛,頻発反復性緊張型頭痛,慢性緊張型頭痛に分類されます.
  • 稀発反復性緊張型頭痛1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で生じる頭痛になります.一方,頻発反復性緊張型頭痛1ヶ月に1日以上,15日未満(年間12日以上180日未満)とより頻度が高く持続時間がながい頭痛になります.そして1ヶ月に15日以上(年間180日以上)あるものは慢性緊張型頭痛と呼ばれます.それぞれ頭の周囲(頭蓋周囲)に圧痛を伴うものと,伴わないものが存在し,これによりさらに細分化されています.
  • 緊張型頭痛の診断基準を1つだけ満たさず,さらに片頭痛でないものは緊張型頭痛の疑いとしています.
  • 稀発反復性緊張型頭痛はある意味日常生活のストレスに対する正常な反応の範囲内と理解されています.頻発反復性緊張型頭痛は時に日常生活に支障を来すことがありますが,慢性緊張型頭痛では普段の生活に高度な支障を来すことがあり適切な治療が必要となります.
  • 獨協医科大学神経内科 竹川英宏