日本頭痛協会の設立趣旨並びに代表理事のメッセージ

日本頭痛協会代表理事 北川 泰久(平成28年11月~)

 

  頭痛協会設立の背景 本邦の頭痛患者は4000万人と推定され、国民の健康を脅かす重要な疾患の一つとされています。なかでも片頭痛の有病率は840万人にのぼり、世界保健機構(WHO)によれば、健康寿命を短縮する疾患の19位(女性では12位)に位置付けられております。全国疫学調査によれば片頭痛患者の74%は日常生活に何らかの支障をきたしていますが、受診をしても、疾患の説明・治療の内容が不満足と感じている患者が多く、残念ながら本邦の頭痛診療のレベルはまだ十分に国民のニーズを満たしておりません。また頭痛専門医は859名を超えましたが(2018年現在)、患者の受け入れ態勢や相談窓口は整備されているとは言い難い状況にあります。

 

■頭痛協会設立の動機 

日本には医師を対象とする社団日本頭痛学会がありますが、頭痛の社会啓発を目的とする組織がありませんでした。頭痛患者さんの未受診者は多く、学校では学業の妨げとなる頭痛は「気のせい」と軽くみられ、実業界でも作業能率の低下・休業により経済的損失を生じております。市民の間でも鎮痛薬の過剰使用による薬物乱用頭痛が後を絶ちません。このような不幸な事態を打開すべく日本頭痛協会を設置するに至りました。

 

■頭痛協会の目的 本協会は、頭痛に関する知識の普及啓発、頭痛患者およびその家族の療育指導、頭痛に関する調査研究等を行うこと

によって、頭痛患者の福祉の増進、および頭痛関係者のコミュニケーションを促進することを目的としております。頭痛関係者とは、患者家族、医師、看護師、薬剤師、学校医、養護教員、産業医など、あまねく頭痛に関与するものを包括します。

 

■頭痛協会の事業 

本協会は、前条の目的を達成するために、頭痛に関する正しい知識の普及啓発を目的とした講演会・勉強会、市民講座等の啓発活動、頭痛患者および関係者に対する療育指導および支援、その他目的達成のために必要な事業を行います。頭痛医療をよくする目的で頭痛医療を推進する患者と医療従事者の会、JPAC (Japanese Patient Advocacy Coalition for Headache)を2017年6月、日本頭痛学会、日本頭痛協会合同で結成しました。 JPACの活動を通じてより良い頭痛医療の必要性を社会の多くの人に知っていただき、また行政もさらなる理解を深めていただき、その活動は地域単位の草の根的に進めるとともに全国的な活動に発展させることを目指しています。 頭痛協会はJPACの活動を推進します。 

 

■おわりに 「たかが頭痛」と軽視されがちな「頭痛持ち」のQOL向上のための診療態勢の整備し、「頭痛に悩まない、苦しまない」時代を創成するために、頭痛協会に対するご理解とご支援のほどをお願いする次第です。